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あらゆるものを「ファクト」として数値化する。そこに落とし穴はないのか……(写真はイメージ) 写真:イメージマート
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 ロジカルに物事を捉える。数値やデータでファクトを示す……。そうした姿勢は確かに大切かもしれない。コンサル業界が就職先として昨今人気なのも、時代がこうした思考様式を求めている空気の現れか。でも、どこか、もやもやを抱える人もいるのでは?

 コンサル業界は近年、就職市場で活況だ。2027年春卒予定の東大・京大生の就活人気ランキング(就活サイト「ONE CAREER」発表)では、トップ10のうち七つをコンサル・シンクタンク企業が占めた。

 「つぶしのきく安全な選択肢とみなされている」。「東大生はなぜコンサルを目指すのか」(集英社新書)の著者で批評家のレジーさんは話す。伝統的な日本企業の縦割りや昇給が遅いというイメージを嫌い、評価基準や役職の階級、年収の差が明確で、若くても年収1千万円に届きうる環境が人気の背景にあるという。

 コンサルの世界では、新入社員でも大企業幹部に向けて事業への問題提起や提案をしなければならない。そこで武器になるのが、客観的数字などの「ファクト」や、物事を的確に整理する「フレームワーク」だ。これらを駆使し「重要な課題と最適な解決策を見つけ出すことが、コンサルに限らず現代の理想のビジネスパーソン像になっている」という。

 書店にはコンサルの「仕事術」をうたうビジネス本が並ぶ。政治の世界でも、参院選では「対決より解決」「手取りを増やす」を掲げた国民民主党や、ITによる政治変革を訴えたチームみらいが若年層に支持された。「イデオロギーにとらわれないという自認に基づき、テクノロジー活用や手取り増といった実利に近い主張を掲げた政治勢力が伸びたのは、コンサル文化の広まりと無縁ではない」

 レジーさんはこう続ける。「あいまいだったり属人的に決められたりしたことを、コンサル思考で客観的な指標によって大局的に判断することができるようになる。スピード感ある解決を求める現代社会に歓迎されている」

 ただ、コンサル的思考のように「客観性」をうたい数値化で物事を評価する行為を、政治のような公共的な場で至上視する動きには注意が必要だ、と財政学者の掛貝祐太・茨城大准教授は言う。「何が『ファクト』として数値化されやすいのかにも目を向けるべきだ」

1990年代にはやった「可視化」

 日本では1990年代以降…

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