Smiley face
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東京コレクション参加に費用な費用がかかることをジャンに説明する開。
「ファッション‼」から ©はるな檸檬/シュークリーム
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 ハイファッションの世界を舞台にした長編漫画「ファッション‼」が話題を呼んでいる。華やかな業界の暗部に鋭く切り込んでいることに加え、ひとりの天才デザイナーが周囲の人間を懐柔し搾取していく展開は、ヒューマンホラーとも言うべき恐ろしさだ。やけにリアルな物語は、いかにして生まれたのか。「みんなが当たり前に共有していることに、ちょっと異議申し立てる気持ちで描いている」という作者のはるな檸檬(れもん)さんに、背景を聞いた。

はるな檸檬「ファッション‼」 

2021年から文春オンラインで連載。23年にいったん終了し、今年6月、マンガ編集・出版を手がけるシュークリーム社が運営する無料のWEBマンガサイト「OUR FEEL(アワフィール)」で連載を再開した。

サクセスストーリーの「見せかけ」

 《主人公の開(かい)は、とある理由で一線を退いた元ファッション業界人。留学生の新人デザイナー・ジャンの才能と情熱にほれ込み、人並み外れたプロデュース能力を駆使して彼のブランドを手伝いはじめる。不器用だが服作りにまっすぐな誠実さで人々の心をつかみ、続々と協力者を得て注目を集めてゆくジャン。だが、その好青年の顔は「見せかけ(ファッション)」にすぎなかった》

 ジャンには謎の魅力があります。イベントで偶然会っただけの人と友達になって、そのままブランドを支えるチームに引き込んでしまう。表面的な人当たりはいいけど、本質的なところを平気でおろそかにして、形だけ取り繕う感じ。ジャンみたいな人は現実世界にも、それこそ昔の知り合いにもいっぱいいます。

 でも、そういう人が表舞台に立つことには、ある種の合理性もあるのかな、と。政治家にもジャンのような人はいますが、ちょっとしたことで傷つく人は大きな仕事はできないし、裏にいる誰かにとっては傀儡(かいらい)として便利だったりするのかも。

 《デザインにかけては天才的だが、ブランドのコンセプトやストーリーには無関心なジャン。開は陰のプロデューサーとして、コレクションのテーマ作りからメッセージの発信までを、無給で担うようになる》

 ジャンと開のようなバディのあり方は、よくあるケースだと思います。ひとりのスターが才能によって成功するというストーリーに客はつくけれど、皆が信じている神話と現実の間には隔たりがある気がしています。

インタビュー後半では、はるな檸檬さんが実際に経験したファッション業界の裏話や、「ジャンのような人」をめぐる思いについても聞きました。

 才能のあるデザイナーがブラ…

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