川村元気さん©Kazuma Yamano

■「朝日地球会議2024」セッション「『8がけ社会』を生きる」を前に

 止まらない人口減少で縮小する社会を前向きに生きるヒントはどこにあるのか。変わり続ける時代の空気を言葉や映像で表現してきた小説家で映画監督・映画プロデューサーの川村元気さんは「悲観してもしょうがない。人間の幸せをどう捉えるか、有効になるのは物語」と話します。その理由や創作への思いを聞きました。

朝日地球会議2024

 川村元気さんは10月26日、東京都内で開かれる「朝日地球会議2024」に登壇します。リクルートワークス研究所主任研究員の古屋星斗さん、作家の九段理江さんと「『8がけ社会』」を生きる~希望を持ち続けるためのヒント」について語り合います。

 ――人手不足を感じる場面はありますか。

 映画業界は、働きたい人がまだいる世界なので、人が足りない感覚はそこまでありません。でも、生活する中ではあります。たとえば、ファミリーレストランへ行くと店員が全然いなくて「人が足りないのだろうな」と思ったことがあります。

 映画のロケで地方へ行ったときも、泊まったホテルの従業員が少なくて大変そうでした。東京ではあまり感じないけど、小説の取材や映画の撮影で地方へ行くと、人が足りない感覚になることはあります。

 僕は1年の約3分の1を海外で過ごしていますが、日本ほど完璧なサービスをする国はありません。時間通りに電車が来る。レストランでは待たされない。ホテルはいつでも清潔です。

 これらは、日本で働く人のきちょうめんさや労働力に担保されている。東京ほどきれいな街がないのは、掃除をする人がいるからです。

 今後はそうもいかなくかもしれません。サービスが今までの水準でなくても、受け入れるメンタリティーが必要になりそうです。

 ただ、難しいと思うのは、その時に日本の良さはどうなるのか。ホテルで掃除が行き届かなくなった時、評価されてきた日本のホスピタリティーはどこへいったのか、という問題は起きる気がします。

ストーリーテラーには良い時代

 ――必要なサービスを担う働き手が減っていく将来をどう受け止めていますか。

 テクノロジーの分野では新たなAIやロボットが開発され、人間のいろいろな役割を代替する。政治や経済の分野でも様々なアプローチがあると思いますが、僕は物語の人間です。自分の力で直接的にどうにもできません。

 「人口減少をどうしたらいいですか」と問われても、それは神様しか解決しようがない。政治や社会が根本的な解決をできなかったから今にいたったわけで、「人口を増やします」というのは神の所業じゃないでしょうか。

 むしろ僕は、この状況で人間が何を発明するかに興味があります。ピンチや逆境の時に進化や発明するのが人間という動物です。だから、次の物語があるはずです。

 僕が物語を書く時は、幸福論…

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