東京都北区の工事現場。炎天下、大成建設など3社で作る共同企業体(JV)の作業員ら約120人が働く。梅雨の晴れ間となった7月初旬、現場は34度になった。
「低温サウナの中で仕事している感じです」
JVの作業所長・後藤修二さん(50)は話す。
災害時の断水などに備え、地下に巨大な貯水タンクを造る、王子給水所(仮称)配水池築造(はいすいちちくぞう)工事。屋根も空調もない現場では、熱中症対策に様々な工夫を凝らしている。
気化熱で体感温度が少しでも下がるよう、軀体(くたい)内6カ所に大型ミストファンを設置して噴霧。体内にこもった熱を少しでもさましてもらおうと、休憩所ではかき氷を提供する。この他にも、身体の深部体温上昇をアラームで知らせるウェアラブルデバイスや、タブレットに顔をかざして撮影した顔色や表情などから、AIが熱中症の危険度を判定する最先端システムも活用する。
しかし、生コンクリートを型枠の中に流し込み、貯水タンクの壁や柱を造る工程は、固まり始めるまで、手を止めず一気に作業をしなければならない。その間、休憩を挟み約6時間。涼しい場所へ逃げられない作業員の身体を、どう冷やし続けるかが課題だった。これまでも園芸用噴霧器でミストをかけて体を冷やしていたが、今年新たに導入したのが冷凍ペットボトルを使った「水冷服」だ。
水冷服背面のタンクに入れた冷凍ペットボトルとコップ1杯程度の水。バッテリーで駆動するモーターが水を吸い上げ、冷凍ペットボトルの頂点から流し落とすことで冷水を作る。それをベスト内側のシリコーンチューブへ循環させて身体を冷やす仕組みだ。
冷却時間は、水冷服のグレードの違いにもよるが約90~180分。冷凍ペットボトルを交換することで連続使用できる。
「冷水が通るチューブが身体に密着して、背中や脇にダイレクトに冷たさを感じる。涼しい」と現場でも好評だ。
「暑い環境、熱い空気が回ってくる」
開発したのは電動工具メーカ…