Smiley face
奈良県立大学の改革について説明する北岡伸一理事長(左)と尾久土正己学長=奈良市登大路町の県庁

 奈良県立大(奈良市)は来年度から、理系と国際系のコースを新設する大学改革を行うと発表した。同大は地域創造学部のみの単科大学だが、文系・理系の区別なく、学生の関心に応じて幅広く学べるようにするという。

 大学側が25日、記者会見を開いて明らかにした。2年前に開校した県立大付属高校の生徒50人を推薦で受け入れるのを前に、態勢を整備する形だ。

 推薦生の受け入れで入学定員は150人から200人に増やす。また、従来の4コースを、「観光創造」「地域構想」「人文科学」「社会科学」に再編し、「国際共生」「工学自然科学」の2コースを加える。複数のコースにまたがって学ぶことができ、10人前後の教員の新たな採用を予定しているという。

 尾久土(おきゅうど)正己学長は「高校までの学びで文系・理系に分けることが日本の遅れにつながっている」とし、柔軟に学べることの意義を強調した。同大は、大阪や京都に比べ県内出身の学生が少ない傾向がある。尾久土学長は、県内に国公立の総合大学がなく、高校生が県外に流出する一因になっていると指摘。「県内の高校生にとっても、より魅力的な改革になる」と話した。

 同大に限らず、県内大学の卒業生が県外に就職する傾向がある。尾久土学長は「大学の中だけで4年間学んで地域に関心を持つことはなかなか難しい」とし、今回の改革で県内でのフィールドワークをより充実させたいとの考えを示した。

 国際協力機構(JICA)特別顧問でもある北岡伸一理事長は、地球温暖化やAI(人工知能)、国際紛争などを例に挙げ、「フェイクニュースを見抜ける知性と、いまの社会を生き抜く力が必要だ」と説き、大学院の開設にも意欲を示した。

 2028年には全学で800人規模になることから、建物の新設を県に要望しているという。一方、理系の研究については「実験施設などのハード整備は費用面などから難しい」とし、情報や環境など、ソフト面での学びを想定しているという。

 入試のあり方や学費については、現時点で変更の予定はないという。(机美鈴)

共有