パリで2025年9月8日、国民議会で演説するバイル首相=AP

 フランスの国民議会(下院)は8日、バイル首相の信任投票を否決した。バイル氏率いる内閣は、発足から9カ月で総辞職する。この2年足らずで首相が4人も交代する異例の事態となり、マクロン大統領の政権運営は一段と厳しくなりそうだ。

 信任投票は、政府が提案した来年予算案の審議を前に、議会から支持を得て成立への環境を整える狙いで、バイル氏の呼びかけで実施された。拡大する財政赤字を食い止めるため、予算案には年金支給額の据え置きなど約440億ユーロ(約7兆6千億円)の歳出削減が盛り込まれた。

 議会は少数与党の中道連合と野党の右派、左派の三つどもえになっており、内閣は与党以外からの支持を集められなかった。投票前から「無謀な賭け」(仏紙ルモンド)と報じられるなど信任される見込みは薄かった。

 マクロン氏は近く新しい首相を指名しなければいけないが、難しい選択を迫られる。

 昨年6月、マクロン氏は直前に大敗した欧州議会選からの巻き返しを図ろうと、パリ五輪を目前にして突然議会を解散。しかし総選挙では、極右の流れをくむ右翼政党「国民連合(RN)」と左派連合の躍進を許した。

 昨年12月には就任わずか3カ月の首相に対して議会が不信任を突きつけ、内閣が総辞職した。左派連合は自陣営から首相を選ぶよう求めるなど、誰が首相になっても混乱は続く見通しだ。

 マクロン氏には再び議会を解散する選択肢も残されている。しかし、足元の世論調査によると与党が伸長する見込みは薄く、マクロン氏は早期解散をこれまで否定している。

 フランスの首相は主に内政と議会運営を担当。大統領は外交や軍事を担い、首相や閣僚の任命権を持つ。マクロン氏は2027年に2期目の任期を満了して退任を迎えるが、RNを実質的に率いるルペン氏は議会の解散を求めるなど、圧力を強めている。

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