フランスのマクロン大統領が、自国の「核の傘」を欧州全体に広げる考えを示しました。欧州の北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国は歓迎し、ロシアは激しく反発しています。欧州の軍事情勢に詳しい東京外国語大学総合国際学研究院の吉崎知典特任教授は「トランプ米大統領の孤立主義的な政策が、欧州の戦略的自律性を促している」と語ります。
――フランスが保有する核戦力とは。
フランスは約300発の核弾頭を保有していると言われています。原子力潜水艦4隻に搭載するSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)と戦闘機などに搭載する空対地ミサイルなどで運用します。
戦略的自律性を模索するフランスの象徴は故・シャルル・ドゴール大統領による「独立核戦力」の構想です。フランス自身の核報復力や情報ネットワークの確立を追求し、人工衛星の打ち上げもEU(欧州連合)との協力で進め、可能な限り米国への依存を減らそうとしています。
一方、欧州のもう一つの核保有国である英国は、米国との「特別な関係」を誇っています。米英豪3国間が原潜を共有するAUKUSもその象徴です。代償として米国への依存は避けられません。英国が保有する200発以上の核も原子力潜水艦やSLBMは米国の技術に基づいています。
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■なぜ、フランスの核戦力は米…