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【連載】フランスのリアル 麻薬危機編 第4回(完)

写真・図版
フレデリック・プロカンさん=本人提供

【連載】フランスのリアル 麻薬危機編

 フランスが麻薬に揺れています。密売は都市部から地方に広がり、市民が抗争の巻き添えになる事件も起きました。貧困や移民差別ともつながる麻薬犯罪は、政治を変えつつあります。麻薬の蔓延が生む危機は社会に何をもたらすのか。足を運んだ現場には、華やかなパリからは見えないもう一つのフランスがありました。

 フランスで麻薬をめぐる犯罪そのものは以前から起きてきました。しかし、パリを拠点に40年にわたって事件取材を専門に続けてきたジャーナリストのフレデリック・プロカンさん(65)は、麻薬取引をめぐる犯罪が単なる事件のニュースではなく、フランスの政治を左右する問題になっていると言います。

 ――フランスのメディアでは連日のように麻薬の問題に関連した事件が報道されます。どれほど深刻になっているのでしょうか。

 フランスで麻薬をめぐる事件は長らく、「三面記事」の扱いで大きなニュースになることはなく、問題の深刻さを理解している政治家もほとんどいませんでした。しかし、ここ数年で状況は一変しました。麻薬の密売が壊疽(えそ)のように国に蔓延(まんえん)しているという共通理解のもとで、麻薬犯罪は政治が解決すべき最重要課題になっています。

 6月に施行された麻薬対策の新しい法律は、元老院(上院)が主導しました。フランスの上院は地方の声を強く反映する議会です。治安に敏感な右派だけでなく左派も厳罰化を中心とする新法を支持したのは、麻薬が地方の住民にとって深刻な問題になっている証拠です。麻薬の問題が来年の統一地方選や2年後の大統領選の争点になることは間違いありません。

  • 【参加者募集】フランスの「インビジブル・マイノリティー」(見えない少数派)を考えるオンラインイベント

「見捨てられた」住民が右翼支持へ

 ――昨年6月の欧州議会選やその後の国民議会(下院)の総選挙での右翼「国民連合(RN)」の躍進に、麻薬犯罪をめぐる治安の悪化は影響していますか。

 中規模の都市や小さな町村に…

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