最下層の「アンダークラス」が誕生して日本は新しい階級社会になった――。そんな分析で話題を呼んだ社会学者の橋本健二さん。新たな調査結果をもとに、アンダークラスが「ブラックホール」化し、政治から疎外されていると訴えている。格差を解消する政治を生みだすため、まず足元を見つめてみたい。
「新しい階級社会」とは
――階級という視点から日本社会を見つめてきましたね。アンダークラスという新しい階級が最下層に出現したと訴える著書「新・日本の階級社会」が話題を呼んだのは7年前でした。
「アンダークラスとは、パートの主婦を除いた非正規雇用の労働者たちを指します。人数は890万人。日本の就業人口の13・9%を占めます。1980年代から進んだ格差拡大に伴って生まれた新しい階級であり、現代社会の最下層階級です」
「2022年に東京・名古屋・大阪の3大都市圏で私たちが実施したネット調査によれば、アンダークラスの人々の平均年収は216万円で、貧困率は37・2%に達していました」
――正規雇用の労働者などと比べて、どのくらいの経済格差が見られたのでしょう。
「同じ調査で見ると、アンダークラスの人々の平均年収は、経営者ら資本家階級の人々との比較では2割強、正規雇用の労働者と比べても4割強にとどまる額でした。貧困率を見ても正規雇用の人々は7・6%なので、桁違いです。非正規雇用の労働者と正規雇用の労働者の間には、もはや同じ階級とはみなせないほどの経済格差があるのです」
――今年6月に出された新著「新しい階級社会」の中で印象的だったのは、アンダークラスがブラックホール化しているとの指摘でした。なぜ、そのようなたとえを使ったのですか。
「貧困や格差の『連鎖』としてアンダークラスを理解しようとする誤解が気になっていたからです。貧困層の家庭の子は貧困層になるという連鎖です」
「確かに一般的には連鎖が見られるのですが、アンダークラスに関する限り、それはあてはまりません。そもそも子どもが生みだされにくいからです」
際立っていた未婚率の高さ
――どういうことでしょう。
「3大都市圏で行った私たち…