100年をたどる旅~未来のための近現代史~⑧西太平洋というリスク
第1次世界大戦と第2次大戦の「戦間期」に複数の紛争が連動した過去と同様、いま世界戦争の足音が近づいている――。警世の論文を米専門誌に発表したジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究所(SAIS)特別教授のハル・ブランズ氏に、分析の背景を聞いた。
――国際政治経済誌「フォーリン・アフェアーズ」に掲載された「The Next Global War(次なる世界大戦)」と題した論文で、現在の国際情勢が戦間期と似ていると指摘しています。どういうことですか。
「現在の国際情勢の特徴は、いくつかの地域紛争がそれぞれ別の理由で生起しながら、より危険な形で絡み合っていることだ。ウクライナでのロシアの戦争を、イランと中国が支援。ロシアはイランに高度な兵器を売却し、中東紛争で(イエメンの親イラン・反政府武装組織)フーシ派を様々な形で支援している可能性がある。西太平洋では中国が、戦争に至らずとも、積極的に攻勢に出ており、(ロシア、イラン)両国は中国との関係を強化している」
地域紛争が融合する
「こうした情勢は、第2次世界大戦の始まり方とさほど変わらない。我々は第二次大戦を『世界大戦』として記憶している。だが、その発信源はドイツ、イタリア、日本が、(欧州、アフリカ、アジアという)別々の地域で進めていた領土拡大に根ざした三つの別々の地域的な緊張だった」
「そして最終的に、新たな(3カ国の)国際的連携が発展するにつれ、それらの紛争がより密接に融合し、最高潮に達した。これが、我々を悩ませている戦間期と今日の情勢の類似点だ」
――「欧州と中東で戦争はすでに起きており、西太平洋での紛争が起これば、別の恐ろしいシナリオがもたらされる」とも指摘しています。次の世界大戦の引き金を引く可能性はあるでしょうか。
「西太平洋で戦争が起きれば…