10代の娘2人をつれて会場を訪れた女性は、壁面に掲げられた絵に吸い込まれるように見入っていた。
「緻密(ちみつ)な表現のなかにあたたかさやユーモア、神秘性や怖さが詰まっていて、豊かな世界が広がっている。ひとつの絵の中に色々な物語があって、終わりがない。何度も来たくなる」
5月15日、新潟市の県立万代島美術館。「Michi」「怪物園」などの絵本で知られる画家junaida(ジュナイダ)さんの大規模個展「IMAGINARIUM」(6月22日まで)が開かれていた。
2015年に若手の登竜門とされるボローニャ国際絵本原画展に入選。どこか異世界を思わせる風景や人物が細密に描かれ、豊かな色彩の中に明るさと闇が共存する――。こんな世界観が注目を集め、「Michi」「の」「怪物園」「街どろぼう」など次々と話題作となる絵本を世に放った。「怪物園」はIBBY(国際児童図書評議会)ピーターパン賞などを受賞。「の」の各場面は昨年11月に切手にもなった。
会場では絵本の原画はもちろん、宮沢賢治へのオマージュ「IHATOVO」シリーズや、ミヒャエル・エンデの「鏡のなかの鏡」をオマージュした「EDNE(エドネ)」、伊坂幸太郎の小説「逆ソクラテス」の装画など約400点を展示。多彩な活動に圧倒される。
そんな人気画家の作品は、この4月から、毎週日曜日の朝日新聞朝刊・歌壇俳壇面にも登場している。
「歌壇」「俳壇」の題字下のスペースに飾られた鉛筆画の挿絵。<日曜日のブローチ>というシリーズで、毎週オリジナルの描き下ろしの新作が掲載されている。
連載が始まると、挿絵に触発された投稿歌が次々と寄せられるようになった。
「ブローチのぬり絵してたら女の子時計の音を聞いているのね」 (京都府宮津市)中田紗倭子
4月20日付の作品を詠んだ一首。この日は、左右に花をあしらった丸時計が描かれ、女の子が時計の右上で眠っているように見える。文字盤にあしらわれているのは漢数字で、まるでおとぎ話の世界に入り込んだようだ。
作品にタイトルがない理由
「毎回楽しみで、カラーやっ…