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朝日新聞朝刊の歌壇俳壇面に5月18日までに掲載された〈日曜日のブローチ〉6作品

 10代の娘2人をつれて会場を訪れた女性は、壁面に掲げられた絵に吸い込まれるように見入っていた。

 「緻密(ちみつ)な表現のなかにあたたかさやユーモア、神秘性や怖さが詰まっていて、豊かな世界が広がっている。ひとつの絵の中に色々な物語があって、終わりがない。何度も来たくなる」

 5月15日、新潟市の県立万代島美術館。「Michi」「怪物園」などの絵本で知られる画家junaida(ジュナイダ)さんの大規模個展「IMAGINARIUM」(6月22日まで)が開かれていた。

 2015年に若手の登竜門とされるボローニャ国際絵本原画展に入選。どこか異世界を思わせる風景や人物が細密に描かれ、豊かな色彩の中に明るさと闇が共存する――。こんな世界観が注目を集め、「Michi」「の」「怪物園」「街どろぼう」など次々と話題作となる絵本を世に放った。「怪物園」はIBBY(国際児童図書評議会)ピーターパン賞などを受賞。「の」の各場面は昨年11月に切手にもなった。

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大規模個展「IMAGINARIUM」で展示されていた絵本「の」の原画=新潟市中央区の県立万代島美術館、佐々波幸子撮影

 会場では絵本の原画はもちろん、宮沢賢治へのオマージュ「IHATOVO」シリーズや、ミヒャエル・エンデの「鏡のなかの鏡」をオマージュした「EDNE(エドネ)」、伊坂幸太郎の小説「逆ソクラテス」の装画など約400点を展示。多彩な活動に圧倒される。

 そんな人気画家の作品は、この4月から、毎週日曜日の朝日新聞朝刊・歌壇俳壇面にも登場している。

 「歌壇」「俳壇」の題字下のスペースに飾られた鉛筆画の挿絵。<日曜日のブローチ>というシリーズで、毎週オリジナルの描き下ろしの新作が掲載されている。

 連載が始まると、挿絵に触発された投稿歌が次々と寄せられるようになった。

 「ブローチのぬり絵してたら女の子時計の音を聞いているのね」 (京都府宮津市)中田紗倭子

 4月20日付の作品を詠んだ一首。この日は、左右に花をあしらった丸時計が描かれ、女の子が時計の右上で眠っているように見える。文字盤にあしらわれているのは漢数字で、まるでおとぎ話の世界に入り込んだようだ。

作品にタイトルがない理由

 「毎回楽しみで、カラーやっ…

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