医官として感染症の水際対策の最前線に立った後、静岡市の保健所長に就いた田中一成さん(62)。いま、うつ病など精神疾患の回復や高齢者の認知症予防のため、模型やプラモデルを生かす市の施策の先頭に立つ。
模型と出会ったのは20年ほど前。栃木県に単身赴任していたころ、家に帰ってからの暇つぶしに偶然手に取ったのが戦艦大和の木造模型だった。
指先ほどの細かなパーツを組み立て、凹凸をやすりで削り、色を塗り分ける。集中しなければいけないが、ふと、作っている最中は日常の嫌なことやストレスを忘れていたことに気がついた。市販品では物足りなくなり、プラスチック素材からパーツを作るように。模型づくりを趣味にする仲間たちと、完成した作品を見せ合う「オフ会」にも参加し、熱中した。
趣味の世界だった模型が仕事につながったのは、静岡市から保健所長への打診が来たのがきっかけだった。訪れたことはなかったが、いつも購入する模型キットの多くは、静岡のメーカーが手がけていた。「模型の世界首都」をうたう静岡なら、保健所長の業務にも生かせるのではないか――。
「模型づくりは、気持ちを切り替える訓練に」
所長就任後、うつ病など精神…