プロ野球オールスターゲームの模様をネット裏から撮影するテレビ各局のカメラ=1955年撮影

 公正取引委員会が、フジテレビの取材パスを取りあげた日本野球機構(NPB)の調査を始めた。プロ野球と民放の蜜月が陰りを見せ、大谷翔平という希代の選手の登場が両者の関係をさらに変えた。NPBの措置は視聴者の選択肢を狭める危険性がある。

 「歴史的な世紀の一戦を放送できることをうれしく思う」

 昨年10月25日、フジテレビの港浩一社長(当時)は、定例記者会見の場でこう語った。ちょうどこの日は、大リーグ(MLB)・ドジャースの大谷選手が出場するワールドシリーズ(WS)開幕の前日。シリーズがもつれれば放送する回数も増えることから、「個人的にはドジャースが4勝3敗で勝ってくれたら」と期待まじりに語るほどだった。

 WSの地上波中継は、NHKとMLBのニュース放送権を持つ民放との回り持ちで放送される。大谷選手がキャリア屈指の活躍を見せた昨年は、たまたまフジが権利を持つ順番だった。大谷フィーバーの中で巡ってきた偶然に、視聴率で苦戦が続くフジは沸きに沸いていた。

 WSは年によっては深夜帯の放送となることもあるなか、「緊急編成」などと銘打ち、朝帯の生中継に加え、夜帯にはダイジェストまで放送した。

 しかし、26日夜のダイジェスト放送が、NPBの日本シリーズ(日本S)第1戦の裏番組となってバッティング。フジは「プロ野球ニュース」などをはじめ野球を積極的に扱ってきただけに、NPBからすれば、「日本のプロ野球軽視」に映ったようだ。フジは日本Sを取材する権利を奪われることになった。

 取材パス没収という異例の措置に、フジとNPBの関係に溝が生じたが、そもそも民放局とプロ野球は、その発展において二人三脚で歩んできた歴史がある。

「数字が取れない」野球界の救世主

 国内でテレビ放送が始まった…

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