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楽天時代の石橋良太さん

 プロ野球選手が現役のうちに、引退後の「セカンドキャリア」を具体的に思い描くことはたやすいことではない。

 その必要性は長らく叫ばれているものの、プロ野球・東北楽天ゴールデンイーグルスの元投手だった石橋良太さん(34)も「引退後のことは深く考えていなかったですね。自分に何ができるんだろうか、ぼんやりと思ったぐらい」。

 そう振り返ると、視線を遠くに向けた。

 2軍にいた現役時代の光景が頭にある。

 ある選手が「第二の人生」をにらんで、ロッカーで勉強していたが、周りからは苦々しげに見られていた。

 表だって、野球以外のことに取り組むのは難しい風潮が根強い。

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 日本野球機構(NPB)による昨オフに引退または戦力外通告を受けた選手への進路追跡調査(3月末時点)では、対象となった157人の平均年齢は26.3歳と若い。

 独立リーグなどNPB以外も含めて、8割近くが野球関係の道に進んでいる。

 楽天一筋だった石橋さんは、プロ8年間で78試合に登板し、11勝14敗。2023年オフ、来季の契約を結ばないと告げられた。

 「30歳を超えたら、(契約できるかどうかの)流れが分かるじゃないですか。危ない、とは思っていたので悔いなく、やろうと」

 その結果、「野球はやりきった」と思えた。

 トライアウトを受けず、セカンドキャリアへと目を向けた。

 いろいろと模索し、昨年、インターネットでの農産物を販売する会社を立ち上げた。

 そのうち、「野菜から果物まで、(生産)現場に行って、お手伝いしているうちに1次産業に興味を持った」。

 宮城県大和町でコメ作りや園芸をてがける「大輪」の関係者と知り合い、弟子入り。社長を「師匠」、ネギ作りのノウハウに詳しい1学年下の社員を「先生」と呼び、町内にある1.5ヘクタールの畑を借りて、一からネギ栽培に取り組み始めた。

 そして、今年6月には大和町の「地域おこし協力隊」に就任した。

 プロ野球出身者の協力隊員は珍しい中、ネギを地元の特産品にする夢を描く。

 農業の経験があったわけではない。

 「分からんことだらけだった…

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