研究する昆虫の標本を手にする九州大学総合研究博物館の丸山宗利准教授=2024年3月22日午後4時0分、福岡市東区、小川裕介撮影
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 幼少期は追いかけても、大人になると離れがちな昆虫。近年は多様な切り口の書籍が出され、女性らにも人気が広がる。いまなぜ「昆虫が熱い」のか。世界を飛び回って新種の発見を続けながら、SNSなどで魅力を発信する自称「虫屋」に聞いた。

東京育ちの丸山宗利さん、異例のベストセラー

 幼い頃から昆虫を追いかけ、「昆虫の世界を人間社会に例えることは可能ではないか」と常々思っていた。2014年に発刊した「昆虫はすごい」(光文社新書)は、昆虫好きだった元少年のみならず、女性や若者にも広がった。農業や牧畜、奴隷制に至るまで、昆虫の世界には人間に通じる普遍性があると論じてみせた1冊は、この分野では異例のベストセラーとなった。

 「社会の構造は、根本的には昆虫も人間も一緒です。たとえば力を持つ者が働かずして集団の生産力を高めようとする仕組みは、進化の途中で生まれる。人間は感情論や倫理観から考えがちだが、集団や社会の振る舞いとして、そういったことも当然起こりうると理解した上で対策を考えることが大事なんじゃないでしょうか」

 戦争やいじめ、仲間外れ、パワハラなど、昆虫の世界でもよく起きるという。「悪いことだからすぐなくせというアプローチだと、生物としてどこかに無理が出る。それが起こりうるという前提で、知恵を絞るのが良いのではと思います」

3歳の出会い、コカマキリの色彩に衝撃

 昆虫の魅力を社会に伝えるすべを身につけたのは、米国に留学したとき。研究者や学芸員は雑事に追われず専門性を磨き、社会における専門家の役割を常に意識していた。そんな彼らに刺激を受け、当時読みあさっていた英語の論文の記憶だけを頼りに、一気に下書きしたのが「昆虫はすごい」だった。

 「だから専門的な内容に深入りせず、読みやすかったのかもしれません」

 豊かな自然の中で育ったと思…

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