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【連載】インビジブル・マイノリティー フランスのリアル 第6回

写真・図版
リンダ・グオンさん(左から3人目)が運営に携わって2024年2月にアジアをテーマにパリで開かれたイベント=セドリック・オブリーさん撮影

【連載】インビジブル・マイノリティー フランスのリアル 第6回

 移民の国フランスで、アジア系市民が差別に声を上げ始めています。「インビジブル・マイノリティー」(見えない少数派)と呼ばれてきた人たちはなぜ立ち上がったのか。フランスで見過ごされてきたアジア系差別の問題から、日本にもつながる多様性のあり方について考えます。

 「なまりのない上手なフランス語ですね」。シンガポールや香港、タイで2012年から8年間働く間、リンダ・グオンさん(37)は現地で出会った人たちからそう言われることがあった。その度に母国のフランスと自分の間に境界線を引かれた気がした。

 両親はカンボジア生まれのベトナム人。カンボジアの実権を1975年に握り、強制労働や虐殺を繰り返したポル・ポト派の支配を逃れてフランスに渡り、パリ郊外の町にアジア料理レストランを開いた。

 その町で生まれ育ったグオンさんにとって、自分の国とはフランスであり、母語はフランス語だ。アジア系や白人、アフリカ系、アラブ系など様々なルーツを持つ住民が、そのルーツを意識することさえなく混ざり合って暮らす。それがグオンさんにとって日常の光景であり、差別を経験したこともなかった。

 しかし、アジアという異国の…

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