ベトナムの首都ハノイで信号待ちをする自動車やバイク=2025年1月、ニューヨーク・タイムズ

Caution Ahead! Vietnam’s Drivers Are Suddenly Following the Rules.

 赤信号は「止まれ」ではなく、「徐行」を促す標識程度のもの。ベトナムのバイク利用者たちはこれまでずっと、そんな風に考えがちだった。同様に、ラッシュ時でも「歩行者優先」「歩道の走行禁止」「逆走禁止」といったルールを気にすることはなかった。

 歩行者の周りを数多くの車輪がバレエダンサーのように舞う光景に、魅せられる人々もいた。だが、ベトナムの交通事故による死亡率は長年、アジア諸国の中で最悪の水準にあった。飲酒運転の取り締まり強化に続き、ベトナムの国家指導者たちは現在、それ以外のさまざまな課題にも取り組み始めている。

 新しい法律で交通違反の罰金が10倍に引き上げられ、違反切符の最高額は1500ドル(約22万円)を超えた。違反切符[citation]の平均的な金額は庶民の1カ月分の給料を上回っており、彼らの行動を変えるには十分すぎる金額だ。バイク利用者が一斉に慎重になったため、多くの交差点は静かになったものの、渋滞は悪化した。信号が故障した際など、警察が監視しているかもしれないと恐れ、バイクを引きながら歩いて道路を横断するようにさえなった。

ハノイで交通警察官に呼び止められる男性=2025年1月、ニューヨーク・タイムズ

 ホーチミン市郊外の交通量の多い道路沿いで1月、仏塔の周りの樹木を刈り込んでいたファム・バン・ラムさん(57)は、「前より(道路は)安全になり、状況は改善された」と話した。「でも、貧しい人々にとっては残酷なことだ」

 ベトナムをより「文明的」にすることが、(政府の)目標のようだ。この言葉は、公共秩序に関するキャンペーンで政府がしばしば使っており、シンガポールや韓国、日本のような国々の豊かさと秩序が、中低所得国のベトナムが目指すべき理想[north star]であることを示している。

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赤信号できちんと止まるバイクが、以前よりはるかに増えているそうです。ただ、逆走したり、歩道を走ったりするバイクも依然として見られる、とNYTは報じています。

 上記3カ国はいずれも、経済…

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