4月30日はベトナム戦争が終結して50年にあたります。7月には米国とベトナムの国交正常化30年を迎えます。オバマ政権時代の2014年から17年にかけて駐ベトナム大使を務めたテッド・オシウス氏が、両国が戦後、どのように信頼関係を構築してきたのかについて語ります。
- なぜ、ベトナムは米国に勝てたのか 識者が振り返る半世紀前の戦争
――なぜ、米国はベトナム戦争を始めたのでしょうか。
この戦争で5万8千人の米兵と330万人以上のベトナム・解放戦線兵、民間人が亡くなりました。米国社会の弱体化、ベトナムの荒廃などを招きました。ベトナムの歴史、文化、政治に対する米国の無知が、戦争を招きました。米国は第2次世界大戦後、共産主義に対する強迫観念に取りつかれました。国務省は東南アジアでの紛争に対する準備ができていませんでした。
――バイデン前米大統領は24年の国連総会で米国とベトナムの関係改善を強調しました。
人間関係では、敬意を示すことで進歩が可能になります。外交では、権力だけでなく、関係性も重要です。米国とベトナムが、犠牲者への説明や、不発弾や(枯れ葉剤として米軍が散布した)ダイオキシンの除去など、困難な問題に取り組むためには、共通の人間性を見つける必要がありました。両国の人々は、お互いをよりよく理解し、尊重することを学んだと思います。
ジョン・マケイン上院議員やジョン・ケリー上院議員ら、かつての敵を友人に変えた多くの英雄もいました。私がスタッフとして勤務したことがあるピート・ピーターソン氏はベトナム戦争中、(捕虜を収監したハノイの)ホアロー刑務所で約7年間過ごした後、クリントン政権で駐ベトナム大使としてハノイに戻りました。
私は30年間の外交官生活で、尊敬や信頼、パートナーシップが持つ力について学びました。「敬意を示す」とは、パートナーに本当に重要なことが何かを理解し、真剣に受け止めることを意味します。敬意を示すことで信頼が築かれます。
米国とベトナムの深刻な相違点、言論や礼拝、結社の自由など人権問題についても率直に話し合い、敬意を払う必要があります。
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