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 平常心、そしていつもの素直な好奇心が躍動の礎となった。12日にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と初共演した山田和樹さん(46)が、一夜明けた現地時間の13日午後3時(日本時間13日夜)、初日を終えた心境を率直に語った。

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ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮する山田和樹さん©Bettina Stoess

 「うーん、まだほっとはしていないですね。今日も明日もありますから、まだ気が抜けません」

 ベルリン・フィルの本拠地で指揮をするのは3回目。前の2回は、ドイツの別の楽団との共演だった。

 「響きにも、すぐ目の前に聴衆がいる景色にも、まだまだまったく慣れないです。でも、もっと緊張したり、あがったりするのかなと思っていたんですけど、想像していた以上にスムーズにいきました。奏者たちのおかげです。みんなオープンで、威圧的でもなく、僕と同じ土俵でスタートしてくれた。不思議なほどリラックスしていました」

 プログラムに選んだのはドイツ系の作品ではなく、イタリア(レスピーギ「ローマの噴水」)、日本(武満徹「ウォーター・ドリーミング」)、フランス(サンサーンスの交響曲第3番「オルガン付き」)の3曲。それぞれの管弦楽書法の粋を、丁寧に編むことに集中したと語る。

 「『ローマの噴水』は、朝日がのぼってから黄昏(たそがれ)時までの時間の経過をとてもうまく描写しています。黄昏の場面なんて、とってもムーディー。サンサーンスも本当にきれいな曲でしょ。僕、きれいな曲を10曲選べと言われたら、この2曲は絶対に入れると思うんです。オーケストレーションがほんとうにきらきらしている」

 とはいえ、いずれもこのオケにとっては、慣れているとは言い難い曲ばかり。

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ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮する山田和樹さん©Bettina Stoess

 「『オルガン付き』は9年ぶり、『ローマの噴水』は20年ぶりくらいだったそうです。独自の色彩が求められる曲ばかりで、僕のイマジネーションがオケの人たちに届くかどうか、少し心配でしたが、リハーサルの時から本当によく応えてくれた。そして、本番が最高に素晴らしかった!」

 「武満は彼らにとっては初めての曲だったのですが、独奏のエマニュエル・パユさん(ベルリン・フィル首席フルート奏者)に助けられました。初共演だったのですが、世界のトップに立つ人間の器の大きさと包容力を、あらためて目の当たりにしました。ああ、こういう人がベルリン・フィルを象徴する存在なのだなと」

 選曲にあたっては、2010年から第1コンサートマスターを務める親友の樫本大進さんのアドバイスも受けたという。

 「フランスものがいいんじゃ…

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