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写真・図版
「燃比娃」(Ran Bi Wa/英題A Story about Fire)=ベルリン国際映画祭提供

 第75回ベルリン国際映画祭(2月13~23日)で「燃比娃」(Ran Bi Wa/英題A Story about Fire、2025年)という中国の長編アニメを見ました。映画祭公式サイトにある説明は「中国の伝統的な水墨画のスタイルで描かれており」「多くの象徴的な中国アニメーションの発祥の地である伝説的な上海美術映画製作所は、本作と共に凱旋(がいせん)を祝う」。そそる! そそられる! 見るしかない!

 ――結論から言うと、イマイチでした。

 同製作所による水墨画アニメといえば短編「おたまじゃくしがお母さんを探す」が1960年、最も有名な「牧笛」が63年。私もDVDを持っています。驚異の技法そのものが澄み切った詩情を醸し出し、のどかな仙境にしばし遊ぶかのような至福のとき。

 現在、アニメの撮影工程がデジタル化され「水墨画タッチ」だって再現可能、そのありがたみはまるっきり薄れてしまいましたが、それでも“本家”上海の“凱旋”とまで言うなら、さぞかし力の入ったものだろうと期待するのは当然じゃありませんか。

 中国南西部の少数民族の古い…

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