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(8日、第107回全国高校野球選手権東東京大会2回戦 安田学園11―5小松川)

 あとアウト一つで、コールド負け。3―10で迎えた八回2死一、三塁。ベンチに戻った小松川の野木悠久(3年)は、打席に立つ仲間を見つめた。「コールドで終わるわけにはいかない。打ってくれ」。祈りが通じたかのように、右越え二塁打で2点をかえした。「よかった。これで九回まで試合ができる」

 小学5年から中学3年まで、ずっと主将を務めてきた。だから、新チームでも主将になるのは自然な流れだった。練習メニューから、ポジションや大まかな打順を決めるのも、すべて自分。西野凌平監督も「みんなの『お母さん』。彼がいたから、ここまでやってこられた」と信頼を寄せる。

 試合中、ファウルフライを捕りにいった時にフェンスにぶつかった。痛めた部分をかばって打席に立ったら、今度は右の股関節が痛くなった。六回表の守りでは盗塁を刺す好プレーも出たが、七回の守備から交代。ベンチ裏で治療をしながら、味方の逆転を信じたが、かなわなかった。「私立の強豪と最後まで戦えた。勝ちたかったけど……」。試合後は、仲間に声をかけ続けた。

 中学2年の時によくしてくれた先生に憧れて、教師になるのが夢だ。両親も教師。2人とも、学校のことを楽しそうに話してくれるのを見て、ますますその思いを強くした。「自分がしてもらったように、(気分が)落ちている生徒を救ってあげられる先生になりたい」。次の目標に向けて、明日からは、勉強の日々が始まる。

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