Smiley face
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バイクの上でくつろぐ野良猫=2025年1月8日、イスタンブール、新屋絵理撮影

 丸い屋根のモスクがあちこちに立ち、イスラム教の祈りの時を告げるアザーンが響くトルコのイスタンブール。有名なブルーモスクに入ると、男性がひざの上で猫をなでていた。この街は猫の街とも呼ばれ野良猫が多い。道ばたのバイクの上やカフェ、地下鉄の駅、どこに行っても猫、猫、猫。

 国民の9割以上が信仰するイスラム教の預言者ムハンマドも猫を大切にしたとされる。初代大統領のアタチュルクは犬をかわいがったらしい。そのためか、トルコ国民は動物に親切だ。街のベンチに座る大学生カップルは、野良猫を抱き上げ「いると雰囲気がやわらぐ」とうれしそうだ。

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イスタンブールで野良猫をかわいがる大学生のカップル=2025年1月8日、新屋絵理撮影

 大きな野良犬もいる。小学生のころ、地元・岩手県の田んぼで、学校帰りに野良犬に追われ「あっちゃいげ!(あっちに行け)」と泣きながら必死に逃げた記憶がよみがえる。そんな私をよそに、トルコの野良犬は自由に歩き、寝そべり。日本なら即通報だろうが、ここでは誰も気に留めない。2020年にはイスタンブールの野良犬を撮影した映画「ストレイ 犬が見た世界」が公開され、日本や米国などでも上映され話題になった。

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イスタンブールのブルーモスクのそばを歩く野良犬=2025年1月8日、新屋絵理撮影

 そんなトルコで21年、ペットショップから犬や猫が姿を消すことになった。動物愛護法の改正で「動物はモノではなく生き物」と確認され、店のケージでの犬や猫の販売が禁止されたという。なんと動物への優しさがあふれる国だろう。だが取材すると、優しさだけでは解決できない、人間と動物の共存をめぐる難しい問題が見えてきた。

野良犬を殺さない原則を掲げるトルコ。実は江戸時代の日本でも、5代将軍の徳川綱吉が「生類憐れみの令」を出し、野良犬の保護に取り組んだ歴史も。記事後半では、トルコのほか日本からも動物と人間の共存をめぐる問題を考えます。

■野良犬は推定650万匹、狂…

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