海の中でペンギンは何をしているのか、ペンギン自身に教えてもらおう――。動物に観測機器をつけて生態をさぐる「バイオロギング」研究の道を世界に先駆けて切りひらいた功績で、内藤靖彦・国立極地研究所名誉教授(83)に第23回山階芳麿(やましなよしまろ)賞(朝日新聞社共催)が贈られ、7月22日に秋篠宮さまから表彰を受けた。

2013年1月に撮影された映像から。海中を泳ぐ仲間の様子が映っていた=国立極地研究所の高橋晃周教授提供

 同賞は、鳥類の研究や保護に功績のあった個人や団体が対象。内藤さんは「最初は『無理だ』と相手にされなかったが、他の人がやらない研究を続けたことがよかった」と振り返る。

 1980年代前半に内藤さんが開発したペンギン向けの記録装置は長さ約8センチ、直径2・5センチの筒状の形。重さは70グラムあまりで、ひなにエサを与えるために巣と行き来するペンギンの背中にバンドで結びつけて海中での動きを探る。

ペンギン向けに製作した記録装置を手に持つ国立極地研究所名誉教授の内藤靖彦さん=東京都港区

 「研究を始めた1960年代には、もう月に人類が着陸していたのに、水の中で動物が何をしているかは誰もわからない時代。人間が潜っても限界がある。それなら動物自身に教えてもらうのが一番早い」

 貝の採集のために内藤さん自身、潜水を繰り返す中で、ボンベなど海中の装備の重要性を痛感していた。ただ、まだアナログ機器の時代。ペンギンに取り付ける観測機器のアイデアをメーカーなどに相談しても、「そんなのとても無理です」と相手にされなかったという。

 自力で材料を探し、熱意にほ…

共有
Exit mobile version