中国による日本産水産物の輸入禁止から1年9カ月。ようやく再開への合意にたどり着いた。交渉が長引いた背景には、中国が振り上げた拳をいかに下ろすかを巡る、双方の駆け引きがあった。10都県に対する食品輸入禁止措置は継続されており、交渉は今後も続くことになる。
- 日本産水産物の中国向け輸出、再開で合意 処理水巡り2年間全面停止
2022年の水産物の輸出額(3873億円)のうち、国・地域別のトップは中国(871億円)だった。中でも主力商品のホタテ(食用)は489億円を占めた。しかし、最大の「お得意様」だった中国の突然の禁輸措置で、漁業関係者は在庫の山を抱える事態となった。
北海道紋別市にある「丸ウロコ三和水産」もその一つ。禁輸後、同社の山崎和也社長は、一つの輸出先に頼らない「リスクの分散」をより意識するようになった。米国やベトナム、タイなどの販路を水産会社と開拓し、中国以外への輸出を40%ほど伸ばし、中国向けの減少分を穴埋めした。
政府も一部の国と地域による禁輸措置の影響を受けた水産業を支援するため、これまでに800億円の基金を含む約1350億円の予算を計上してきた。このうち、輸出量の減少が大きかったホタテやなまこなどの品目対策に600億円以上を計上。禁輸直後には、宮下一郎農林水産相(当時)が「1人5つぶ食べて欲しい」と訴え、北海道の森町などは町内の水産加工業者からホタテを買い取り、全国の学校給食に無償提供した。
新たな販路開拓の支援もあり…