漫画界のアカデミー賞と言われる米アイズナー賞で今年7月、殿堂入りを果たしたホラー漫画家の伊藤潤二さん(62)。殿堂入りは手塚治虫さん、宮崎駿さんらと並ぶ快挙だ。デビューから約20年間、担当編集者だった故・原田利康さんには「漫画の『いろは』から教えてもらった」という。その中でも忘れられない言葉があるそうで――。
30歳前後のころだったか。デビューから数年経ち、仕事も脂が乗ってきた時期のことだ。ベテランの担当編集者の原田利康さんが「作品は良い。あと必要なのはネームバリューだけだなあ」と言った後に続けた。「伊藤さんはそのうち何かやらかす気がする」
「よくない意味での『やらかす』です。『しでかす』だったかも」。若者の鬱屈(うっくつ)や危うさを見抜き、ぴりっと引き締めたのだろうか。
耳に残る母の言葉「潤はいい子」
当時、ネーム(下書き)のや…