高齢化や担い手不足に直面する保護司制度について議論する政府の有識者検討会が29日開かれ、焦点となっていた報酬制について「導入はなじまない」との見解でまとまった。ただ、今後の社会情勢の変化に合わせた「不断の見直し」が必要との意見も出ており、こうした考えもあわせて9月にも最終報告書をまとめる方針。
- 【詳報】自宅招いてお茶を出して 無償奉仕の保護司、悩む面接相手との距離感
保護司は非常勤の公務員の立場だが、地域住民らが無給で担っている。待遇が負担に見合わないとの見方があることを踏まえ、昨年5月に始まった有識者検討会でも報酬制の導入が論点の一つになった。
保護司や学識者らで構成される検討会でも、新たな保護司の確保には報酬が必要だとする声があったが、委員の多くは「報酬に見合う成果の評価が難しい」「無報酬だからこそ(罪を犯した)対象者が心を許してくれる」などと導入に慎重な考えを示した。
この日の会合で示された最終報告書の素案では、無償で続けられてきた活動は「利他の精神の象徴で、堅持していくべき価値」と位置づけられた。無報酬を維持する一方で、活動の拠点となる「更生保護サポートセンター」の運営費用など「実費」相当分の支給額を引き上げる方針も盛り込まれた。
素案ではほかに、企業が定年を延長する潮流を踏まえ、新たに保護司に委嘱する際の年齢を原則66歳以下としている要件を撤廃するとした。また、2年の任期について、より長く活動できるよう見直すと明記した。
5月に大津市の保護司が殺害された事件を受けた安全対策としては、保護司の不安に応じ、保護観察官が対象者を直接担当する▽1人の対象者を複数の保護司で担当する制度の積極活用▽更生保護サポートセンターなど自宅の外で面接できる場所の確保――なども盛り込み、大筋で了承された。最終報告書がまとまれば、法務省は保護司法の改正をめざすことになる。(久保田一道)