2009年8月、陸上の世界選手権ベルリン大会の男子100メートルで世界記録を更新する9秒58をマークし、セイコーのタイマーの横で喜ぶウサイン・ボルト(ジャマイカ)=ロイター

 世界陸連(WA)が主催する陸上の第20回世界選手権東京大会は、前身の国際陸上競技連盟(IAAF)時代から、日本企業が長く支えている。現在パートナー契約を結ぶグローバル企業5社はアシックス、ホンダ、セイコー、ソニー、TDKとすべて日本発。メディア部門にはTBSが名を連ねる。

 WAのセバスチャン・コー会長は「我々と同じ理念や価値観を持つ企業たちだ」と感謝する。なぜ世界の陸上大会を長く支援するのか。スポンサーの狙いや思いを聞いた。

「工事現場じゃないんだから」

 世界記録を出した選手が黄色いタイマークロックに歩み寄る。数字を指さし記念撮影に応じる。

 陸上の国際大会でおなじみの光景だ。男子100メートルで人類最速の9秒58を出したウサイン・ボルト(ジャマイカ)も、2009年の世界選手権ベルリン大会で、恒例の「儀式」を行った。

 セイコーは世界選手権でタイムや距離を刻むオフィシャルタイマーを担う。

 機材のカラー黄色と黒は当初、社内で「工事現場じゃないんだから」と反対意見も出た。企業カラーの青色になる可能性もあった。いまは英断だった、と評判もよい。

 セイコーは1985年、世界陸連(WA、当時は国際陸連)とパートナーシップ契約を結び、世界選手権は87年の第2回ローマ大会から関わる。

 今年8月現在、オフィシャルタイマーを務めたのは世界選手権を含めて202大会にのぼる。世界選手権で計測した世界記録は34回を数える。91年東京大会の男子走り幅跳びでマイク・パウエル(米国)がマークし、今も君臨する8メートル95も含まれる。

2023年、陸上の世界選手権ブダペスト大会女子やり投げで優勝した北口榛花=内田光撮影

 なぜ陸上に長く投資しているのか。

 コーポレートブランディング…

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