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経営危機の若桜鉄道にとってC12は「希望の星」だった。谷口剛史さんは運転士の業務にあたりながら、試行錯誤の末にこの機関車を再び走らせた=鳥取県若桜町、外山俊樹撮影
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若桜鉄道車両係長・谷口剛史さん

 鳥取県若桜(わかさ)町の若桜駅構内。給水塔のわきにとまっていた機関車「C12形167号機」の3対ある動輪が静かにゆっくりと、だが力強く動き出す。見た目は明らかにSL(蒸気機関車)。でも動輪に伝わる力は、圧縮空気が作り出したものだ。

 「蒸気で動かすには整備に数億円の費用がかかり、維持費も毎年数千万円にのぼる。うちのようなローカル鉄道にはハードルが高すぎます。でも圧縮空気なら、コンプレッサー代を含めても数百万円で動かせるようになる」

 1938(昭和13)年製造のこのC12は米子機関区や加古川機関区などで活躍した後、74年に廃車になった。その後、兵庫県内の町役場などに動かない状態で展示されていたのを2007年夏、鳥取県東部の山あいのまちを結ぶ若桜鉄道に運んできた。

 その日の昼休み、クレーンで運搬車から降ろされるC12を見守っていると上司から声をかけられた。「走れるようにしてくれないか」。そして本を1冊渡された。「図説蒸気機関車」とあった。

「SLなんてさわったこともない」気の遠くなるような作業に

 国鉄の分割民営化にともない…

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