1、2、3、4、5……。宮城3区で立憲民主党から立候補予定の新顔・柳沢剛氏(60)は7月、宮城県山元町の田畑を抜ける国道を車で走りながら自民党候補と自分のポスターを数えていた。相手は裏金問題に揺れた安倍派の西村明宏前環境相(64)。「0対36」の大差にショックを受けた。
同町に立憲の地方議員はひとりもいない。県内に29人いる立憲所属の県議や市・町議の半数は仙台市の選出で、同市を含まない宮城3区ではわずか3人だ。白石市や名取市など4市9町で大阪府とほぼ同じ広さがあり、少人数では手が回らない。
もとは「安倍派四天王」と呼ばれた故・三塚博元幹事長の地盤。秘書だった西村氏が21年前に選挙区を受け継ぎ、地方議員や後援会組織はいまも隅々にまで広がる。そのため非自民となるとポスター貼りも一筋縄にはいかない。「店先が難しければ、離れた駐車場の隅でも」。わずかなつてをたどり、頭を下げて一軒一軒をまわる。山元町内のポスターは、8月7日の時点で5枚に増えた。
柳沢氏は昨夏まで仙台放送のアナウンサーだった。立憲関係者に何度も口説かれ、立候補を決意したのが昨年暮れ。先の国会では裏金問題の追及で立憲に風が吹いたが、街頭で訴えても民主党が政権交代を果たした2009年衆院選のような強さは感じない。「都心のコンクリートと田畑の土は違う。コンクリートの砂は風ですぐ巻き上がっても、よく耕された土はなかなか宙を舞わない」
■選挙のたびに候補者が変わり…