(19日、第107回全国高校野球選手権大会準々決勝 東洋大姫路―沖縄尚学)
「今のチームになってマウンドに伝令がきたのは初めてだと思う」。東洋大姫路の渡辺拓雲主将(3年)は言った。
17日の甲子園での3回戦。1点差に迫った直後の四回1死一、二塁のピンチ。監督からの伝令は「力みから上半身ばかり(を使って)投げようとしている。下半身を意識して」と投手の投げる動作に対するものだった。
マウンドの木下鷹大投手(3年)は「その言葉で丁寧な投球へと修正できた」と振り返る。その回を無失点で抑え、続く五回も3者連続三振を奪った。
これまで伝令を送らなかった理由を岡田龍生監督に聞いた。返ってきたのは、桑原大礼(おおら)捕手(3年)への信頼だった。
「どうしても確認せなあかんことは、伝令を出す」と話す。だが、試合前やベンチの中での確認だけでことは足りているという。プレー中は「桑原がタイムをとっている。1年生から正捕手で経験は積んでいて、僕のプラスアルファはあまり必要ないかな」と言う。
桑原捕手は、投手の機微を見ている。表情やしぐさ、少しでもおかしいと思えばすぐに駆け寄る。「投手が楽になるようにしたい」と、ニコッと笑うのが印象的だ。
投手からの信頼も厚い。木下投手は「来てほしい時に来てくれる。桑原あっての自分。いなければ、いいピッチングはできない」。阪下漣投手(3年)も「投手一人一人を理解してくれていて、視野が広くて尊敬する」と話す。
配球についても岡田監督は桑原捕手の成長を感じるという。正捕手になった当初は「9割がアウトコース。配球しているつもりでも根拠がなく、なんで怒られているのかわからなかったと思う」と言うが、いまは、「ほんとうによくなった。自分なりの配球の根拠がでてきた」と語る。
14年ぶりの8強進出に桑原捕手は「ここからは実力差はない。どんどん強気で攻めたい」と意気込む。扇の要の成長がチームの躍進の裏にある。