(26日、第97回選抜高校野球大会準々決勝 広島商0―7智弁和歌山)
甲子園のマウンドに上がった瞬間、重たいものが降りかかってくる感じがした。
広島商のエース・大宗和響投手(3年)は、智弁和歌山のアルプススタンドの応援に圧倒された。一回、立ち上がりの制球難を智弁和歌山の強打線につけ込まれた。
先頭打者への初球。自信のある直球を捉えられた。左飛に打ち取ったが、心は落ち着かなかった。
2番打者にはボールが3球先行し、四球で出塁を許した。次の打者への高めに浮いた球は強振され、三塁打を浴びて先制点を許した。たたみかけるような攻撃にのまれ、二回も得点を許し、5点差とリードを広げられた。
落ち着きを取り戻したのは三回。片岡亮祐捕手(同)から「割り切って、やってきたことを出し切ろう」と声をかけられた。開き直って投げようと気持ちを切り替えると、制球が安定し、変化球が決まり始めた。
三回を三者凡退に仕留めると、六回まで無安打に抑えた。八回に2点を奪われたが、最後まで投げ続けた。
「広商の背番号1番。何とかゲームを作り直してもらいたかった」と荒谷忠勝監督。投手交代という選択肢はなかった。
大宗投手は「試合を決めきってこそエースという監督の采配が伝わった。それに応えきれなかったのが悔しい」。「1番を誰にも譲る気はない」と力強く語っていたエース。試合終了を告げるサイレンが鳴り響いても、涙は見せなかった。
「自分が足を引っ張った試合だから、自分が泣くわけにいかない。しっかり勝ちきれる投手になって戻ってくる」