昨年5月26日未明、サッカーJ1サガン鳥栖に所属していたGK朴一圭(ぱくいるぎゅ)(35)は、自宅の寝室にプロジェクターを用意し、生中継を見ていた。
- 偏った選手起用で求心力低下 マリノスの監督解任、フロントの責任は
横浜F・マリノスがアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)決勝で、アルアイン(アラブ首長国連邦)との敵地での第2戦を迎えていた。
かつてともに戦った仲間たちが、アジアの頂点をかけたピッチにいる。
「ワクワクした気持ちと、うらやましい気持ち。色々な感情を持ちながら見ていた」
結果は1―5の敗戦。ホームでの第1戦を2―1で制していたが、合計スコアで下回り、初のアジア制覇を逃した。
「点差が開いても、最後まで勇敢に戦った姿に胸を打たれた」
約1カ月後のリーグ戦でマリノスと対戦した。入場前に整列したとき、相手のGKポープウィリアムに声をかけた。
「ACL、本当にお疲れ。誇りに思ってほしい」
心の底から自然と出た言葉だった。
2020年10月、マリノスから鳥栖へ移籍した背景には、ACLが大きく関わっていた。
前年のJ1制覇に貢献したものの、ACLでは外国人枠の兼ね合いで、韓国籍だった朴がメンバーから外れた。マリノスは11月下旬から約1カ月間、リーグ戦を戦わず、ACLに臨むことになったが、J1は中断しない。当時のアンジェ・ポステコグルー監督に監督室へ呼ばれた。
「試合から遠ざかってしまうのは選手としてもったいない。試合に出ることが大切だ」
鳥栖の高丘陽平と、正GK同士が入れ替わる珍しい形で移籍が決まった。実質的な「トレード」だった。
この出来事は、自身のキャリアを考え直す機会になった。
「マリノスでタイトルを取る…