マンガ文化に大きな足跡を残した手塚治虫の業績を記念する第29回手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)の受賞作が決まった。マンガ大賞はりんたろうさんの「1秒24コマのぼくの人生」(河出書房新社)、新生賞は「どくだみの花咲くころ」(講談社)の城戸志保さん、短編賞は榎本俊二さんの「ザ・キンクス」(同)、特別賞は一般財団法人横手市増田まんが美術財団が選ばれた。

 贈呈式は6月5日に東京・築地の朝日新聞東京本社で。マンガ大賞には正賞のブロンズ像と副賞200万円、新生賞、短編賞、特別賞にはそれぞれブロンズ像と副賞100万円を贈る。

一押しが割れる混戦

 選考対象は昨年刊行・発表された作品。最も優れた作品に贈るマンガ大賞は、社外選考委員の投票(持ち点15点で1作につき最高5点)の上位作品と、専門家や書店員、一般の推薦1位作品を合わせた7作について、最終選考委員会で議論した。

 推薦1位の「Battle Scar」を始め、各委員の一押しが割れる混戦。「バンドデシネ(仏語圏のマンガ)の技法を完璧に自分のものにしている」(中条)、「日本アニメの開拓者でもある手塚先生の功績が色濃く出ている」(秋本)と評された「1秒24コマのぼくの人生」が最終的に票を集めた。

 新生賞は「どくだみの花咲くころ」の城戸志保さんに。「普通」とは違う子どもたちの関係性を「エンタメとして読ませるという気概を感じる」(トミヤマ)と評価された。「ザ・キンクス」は「一切の動きやせりふに無駄がない、えもいわれぬ世界」(里中)と支持され、短編賞に決まった。

 特別賞は、一般財団法人横手市増田まんが美術財団へ贈ると朝日新聞社が決めた。

横手市増田まんが美術財団、マンガ文化継承に尽力

 「横手市増田まんが美術館」の指定管理者として、マンガ原画のアーカイブ保存にいち早く取り組み、マンガ文化の継承に尽力してきた。

 1995年、秋田県増田町(現・横手市)に開館した同館は、48万枚超の原画を収蔵。展示室で原画が鑑賞でき、保管の様子も見ることができる。

 初代名誉館長は「釣りキチ三平」で知られる地元出身の故・矢口高雄さん。2代目は「銀牙」シリーズの高橋よしひろさんが務める。財団の大石卓代表理事は「今後も『自国の文化は自国で守る』という誇りと使命を胸に、マンガ文化の保存に邁進(まいしん)してまいります」。

贈呈式と記念イベント 読者200人を無料招待

 第29回の贈呈式と記念イベントに読者200人を無料招待します。イベントでは、マンガ大賞受賞のりんたろうさんと選考委員の漫画家・秋本治さんが、りんたろうさんの監督作品や手塚アニメについて語り合います。応募はhttps://t.asahi.com/29eventから。QRコードからも可能です。5月9日締め切り。当選者にはメールでお知らせします。来場者に記念の小冊子とピンバッジをプレゼントします。

1次選考結果(上位7作品まで)

①1秒24コマのぼくの人生(りんたろう、河出書房新社)=10点(中条5、矢部5)

②【推しの子】(赤坂アカ×横槍メンゴ、集英社)=7点(里中5、高橋2)

②Battle Scar(蔵本千夜、KADOKAWA)=7点(里中3、高橋4)※専門家、書店員、一般からの推薦1位

④海が走るエンドロール(たらちねジョン、秋田書店)=5点(高橋5)

④地図にない場所(安藤ゆき、小学館)=5点(秋本5)

④胚培養士ミズイロ(おかざき真里、小学館)=5点(南5)

④ブスなんて言わないで(とあるアラ子、講談社)=5点(トミヤマ2、南3)

社外選考委員

秋本治(漫画家)

里中満智子(マンガ家)

高橋みなみ(タレント)

中条省平(フランス文学者)

トミヤマユキコ(マンガ研究者・白百合女子大学准教授)

南信長(マンガ解説者)

矢部太郎(芸人・漫画家)

※敬称略、50音順

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