ロックバンドMrs.GREEN APPLEの新曲「コロンブス」のミュージックビデオ(MV)が植民地時代の抑圧や差別を肯定するような内容だとして批判を浴び、半日ほどで公開が中止になりました。
日米のポピュラー文化などに詳しい筑波大学助教の渡部宏樹さん(表象文化論)は、「単に個人が知識をアップデートできていないという問題ではなく、日本社会の構造的な問題として考えるべきだ」と提言します。今回浮き彫りとなった構造的な問題とは何なのでしょうか。(聞き手=小川尭洋)
――MVでは、コロンブスら西欧の歴史上の人物が、類人猿に人力車を引かせたり、西洋音楽や乗馬を教えたりする場面が描かれていました。ボーカルの大森元貴さんはコメントで、制作時のキーワードとして「歴史上の人物」「類人猿」「楽しげなMV」などを提案したと説明。「悲惨な歴史を肯定するものにしたいという意図はありませんでしたが(略)配慮不足が何よりの原因です」と振り返っています。
MVの問題点は他の方々が指摘している通りです。先住民を虐殺したコロンブス、大航海時代の地球儀、望遠鏡、バファローの大量虐殺と結びつく角の壁飾り、ベトナム戦争を描いた映画「プラトーン」を類人猿たちに演じさせて鑑賞する様子など、アメリカの植民地主義・帝国主義を想起させる「記号」ばかりがそろってしまっています。一方で、ナポレオンと彼を批判したベートーベンが一緒にいるなどあまり一貫性がない部分もあります。
おそらく、これらは色々な資料を参考にする中で、「かっこいい」「映像映えする」デザインや、何となく楽しげな雰囲気といったビジュアル面だけで集めたのだと思います。制作者は悪意がなく、とても無邪気につくっていたことがうかがえます。
ただし無邪気だから問題ないということではありません。
私たちが何も考えずにイメー…