「わしは近い将来、天に召される。わしの亡きがらは、この桜の木のそばに埋めてもらい、土にかえって、桜の花がきれいに舞うのをながめたい」
元駐ウルグアイ大使の真銅(しんどう)竜日郎(たつひろう)さん(66)は、「世界で最も貧しい大統領」のこの言葉が忘れられない。
- 「世界で最も貧しい大統領」ウルグアイのホセ・ムヒカ氏死去 89歳
真銅さんは2020年11月、南米ウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領の自宅を初めて訪れた。桜の木をプレゼントするためだった。
首都モンテビデオ郊外にある自宅で迎えてくれたムヒカさんは、くたっとしたシャツに作業パンツ姿。元大統領には見えなかった。菊の花や野菜を育てている農場に案内してくれた。
2人で土をかけ、桜の木を植えていたとき、いつものボソボソとした口調で話したのが、「桜の木のそばに埋めて」という言葉だった。真銅さんは驚き、「そんなこと言わず、ずっとかくしゃくとしていてくださいよ」と伝えた。
植樹後、ムヒカさんは「桜が植えられて今日は本当にうれしい。お礼にウイスキーで乾杯しよう」と言い、台所へ向かった。
ムヒカさんの生活は質素そのものだった。
「ここがわしの応接室」 庭のベンチで語ったこと
100平方メートルほどの古…