ホセ・ムヒカさんと乾杯する真銅竜日郎さん(右)。ムヒカさんは自宅ベンチを「応接室」にしていた=2020年11月、ウルグアイ、真銅さん提供

 「わしは近い将来、天に召される。わしの亡きがらは、この桜の木のそばに埋めてもらい、土にかえって、桜の花がきれいに舞うのをながめたい」

 元駐ウルグアイ大使の真銅(しんどう)竜日郎(たつひろう)さん(66)は、「世界で最も貧しい大統領」のこの言葉が忘れられない。

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 真銅さんは2020年11月、南米ウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領の自宅を初めて訪れた。桜の木をプレゼントするためだった。

 首都モンテビデオ郊外にある自宅で迎えてくれたムヒカさんは、くたっとしたシャツに作業パンツ姿。元大統領には見えなかった。菊の花や野菜を育てている農場に案内してくれた。

 2人で土をかけ、桜の木を植えていたとき、いつものボソボソとした口調で話したのが、「桜の木のそばに埋めて」という言葉だった。真銅さんは驚き、「そんなこと言わず、ずっとかくしゃくとしていてくださいよ」と伝えた。

 植樹後、ムヒカさんは「桜が植えられて今日は本当にうれしい。お礼にウイスキーで乾杯しよう」と言い、台所へ向かった。

 ムヒカさんの生活は質素そのものだった。

「ここがわしの応接室」 庭のベンチで語ったこと

 100平方メートルほどの古…

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