開会式で行進する仲間が映し出された大型スクリーンを見る岡山学芸館の村(後列中央)=2024年8月7日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場、大野宏撮影

 第106回全国高校野球選手権大会(朝日新聞社、日本高校野球連盟主催)に岡山代表として出場する岡山学芸館には何人もの部員が「あの人がこのチームをつくった」と、その名を挙げる選手がいる。村柳二(3年)。背番号は無い。岡山大会の直前に20人の登録メンバーから外れた。

 7日に阪神甲子園球場であった開会式。村は右翼席で入場行進の様子を見守った。大型スクリーンに映った学芸館の選手を見上げ、白い歯がこぼれた。

 「岡山(大会)の開会式では『あの中に入りたかった』と正直思った。でも甲子園はずっと憧れてた場所。メンバーかどうかなんて関係なく『やっと来れたなあ』という気持ちでした」

 3年生のまとめ役の一人だ。佐藤貴博監督は「憎まれ役を買って出て、周囲に厳しい話ができる」と評価する。

 昨秋と今春の県大会はベンチに入ったが、出場は代走での1回だけ。寮で同室の高安凰真(おうま)(2年)は「夏のメンバーに残れるかどうかのぎりぎりでも、常にチーム第一だった」。1、2年生に書き出させた、自分たちの課題を夜遅くまでまとめ、時に寝落ちする姿も見た。「メンバーから外れた時は自分も泣きそうになりました。入ってほしかった」と高安は言う。

 ただ、村は「ベンチに入れなくても、練習で残せるものを残していこう」と心に決めた。学芸館の野球部員だった2歳上の兄が夏の大会のメンバーから外れた一昨年、「『なんであいつが』なんて思わず、心から応援できる選手になれ」と言っていたことを思い出したという。

 練習では準備やサポートを統率し、試合では補助員を務めた。「今の役目に自信が持てたから、『甲子園を歩きたかった』という思いが浮かばなかったんだと思います」。10日の聖カタリナ(愛媛)との1回戦でも補助員を務める予定だ。

 選手は続けず、教員を目指す。「結果に執着せず、過程を見られる指導者になりたいです」(大野宏)

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