インドのモディ政権の看板政策「メイク・イン・インディア」は、成果を上げているのか。ものづくりを育てる上で、インドが抱える課題とは。ニューデリーの政策シンクタンク「カーネギー・インディア」のスヤシュ・ライ前副所長(現セプト大学COE〈中核的研究拠点〉研究主任)に聞きました。
――なぜ、製造業の振興が必要なのですか。
インドは急激な経済成長を遂げましたが、それは製造業主導ではありませんでした。世界的に見て珍しい状況です。今後はより発展しているサービス業の高度化を目指しつつ、製造業とのギャップの解消にも取り組む必要があります。
【連載】インド新時代「メイク・イン・インディアの実像」
メイク・イン・インディア(インドで造る)。先進国入りを目指すモディ政権は、製造業の振興に力を入れてきた。トランプ氏が復権して不透明さが増す世界で、生産拠点としての地位を築けるか。新興大国の実力に迫る。
英領植民地からの独立以降、インドで製造業が「うまくいった」ことはありません。多額の補助金を受けた公共企業が、鉄鋼など様々な製品の製造を担い、市場主導の成長は経験していません。根深い課題なのです。
――若者の失業率の高さも深刻です。
その点で、製造業振興はとても重要です。工場ができれば、一度に多くの人が職を得られるからです。工場が集まる州では、大卒者は努力をすれば、月2万5千ルピー(約4万3千円)程度の初任給、固定労働時間、時間外手当が確約されます。
この問題を解決すれば、インドはより幅広い階層で発展を実現できる。そう信じています。
独立以降、得意ではなかった製造業の振興を通じ、より幅広い階層の発展を目指す。ライ氏は、インドにおける製造業振興の意義をこう評します。記事後半では、メイク・イン・インディア政策への評価に加え、隣り合う製造大国・中国との関係性など、インド製造業の今後について語ります。
――モディ政権の製造業振興策とは。
政策は、2段階に分けられます。最初の4~5年は、ビジネスのしやすさの改善と、投資の促進に重点が置かれました。
次の5年では、国内産業保護…