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2日、モンゴルに到着したロシアのプーチン大統領(中央左)=ロシア大統領府提供
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 ウクライナへの侵攻にからみ、国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ているロシアのプーチン大統領が2日にモンゴルを訪れました。モンゴルはICC加盟国のため、プーチン氏を逮捕する義務を負うという解釈がある一方、実際に逮捕する可能性は非常に低いとみられています。なぜでしょうか。元ICC裁判官の尾崎久仁子・中央大特任教授(国際法)に聞きました。

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モンゴルにも逮捕義務 ICC

 ――国際法に基づき個人を裁くICCは、どんな組織ですか。

 ICCは、国際社会全体の価値を揺るがすような最も重大な犯罪について、処罰しないまま放置していた状況をなくし、同様の犯罪を防ぐために2002年に設立されました。犯罪が起きた国で裁判をするのが大前提ですが、その国が裁判をする能力や意思がない場合にICCが行います。

 ロシアによるウクライナ侵攻に関しては、ロシアもウクライナも加盟国ではありませんが、ウクライナはICCの管轄権を受諾し、日本を含む40カ国以上が戦争犯罪などの捜査をICCに付託しています。

 ――プーチン氏がモンゴルを訪れることになりました。ICCは昨年3月にウクライナの子どもを連れ去ったとしてプーチン氏に逮捕状を出しています。加盟国のモンゴルには逮捕の義務があるのではないですか。

 ICC規程では、加盟国はICCの管轄範囲内にある犯罪に関する捜査や訴追について「十分に協力する」とし、逮捕や引き渡しの請求に「応ずる」と定めています。

 すでに逮捕状が出ていますから、加盟国は自国内にプーチン氏が入った場合には逮捕や引き渡しの義務を負っている、というのがICCの原則的立場だと思われます。ICCも、訪問発表の時点でモンゴルへの何らかの接触を始めていると思います。

逮捕しない国際法の理屈は

 ――一方で、ロシア政府はモンゴル側と「十分に話し合った」として逮捕の懸念がないことを表明しており、モンゴルが逮捕しない可能性が高いとみられています。それは加盟国の逮捕義務に違反するのではないですか。

 ここは解釈の分かれるポイントです。

記事後半では、モンゴルにとって主要援助国である日本に求められることや、今回の訪問が招く影響についても解説しています

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