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名古屋地方・高等裁判所

 会社が適切な配慮を怠ったため、同僚からセクハラを受けたなどとして、愛知県内の女性が当時勤務していたヤマト運輸を相手取り、約3400万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁(朝日貴浩裁判長)は10日、請求を棄却した一審・名古屋地裁判決を変更し、同社に約88万円の支払いを命じた。

 女性は当時、契約社員として県内の拠点で配達業務を担当。18年12月~19年1月、業務指導をする側の先輩の男性従業員から胸を触られるなどのセクハラを受けたとして、会社側の安全配慮義務違反などを訴えていた。

 一審・名古屋地裁判決は、女性が別の同僚にセクハラを申告した後の被害についてのみ、会社側の同義務違反を認定。一方で、精神的苦痛は男性が支払った70万円の損害金を超えるものではないと結論づけ、請求を退けていた。

 これに対し、高裁判決は、男性が社内外でセクハラを繰り返していたと指摘。女性の入社前に集荷先でセクハラをし、営業所長らが謝罪をしたこともあった。判決は、会社が男性にセクハラに関する指導をせず、男性を車の助手席に乗せて行う「横乗り」という研修を行い、2人きりの機会を設けていたなどとして、同僚への被害申告前のセクハラにも同義務違反を認めた。セクハラ行為が原因で発声障害が生じたという女性の訴えは退けたが、障害が一時的に悪化したと認めた。そのうえで、セクハラによる損害は約150万円と認定した。

 原告代理人の伊藤真悟弁護士は「行為が悪質で、大きな精神的苦痛を負ったと認定された。後遺障害との因果関係が認められず、被害者の実態に即した判断をしてほしかった」と話した。

 ヤマト運輸は、朝日新聞の取材に対し「判決内容を精査した上で、今後の対応を検討する」とコメントした。

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