連載・中 鉄のまちと62年 お恵閉店
連載・上 横丁の名店が終幕 鉄の街と62年 2度の復興見つめた86歳おかみ
鉄のまち・岩手県釜石市の横丁で62年、続いた飲食店「お恵」が閉店します。先の大戦と戦後の復興、鉄冷え不況、そして震災復興。86歳のおかみが店を切り盛りしながら見つめてきた光景、人々との交流を描きます。
のんべえ、か、のんべい、か。
地元出身の写真家、佐々木貴範さん(58)は「呑(の)ん兵衛横丁」の歴史を調べようと、岩手県釜石市の図書館で過去の新聞をたどった。ところが、横丁の名称すら、漢字なのかひらがななのか、読み方すらはっきりしない。
60年前から横丁の代表を務めてきたお恵(菊池悠子)さん(86)は気にしない。「正式には軽飲食店組合で、横丁は略称や通称」。通帳も印鑑も組合名で、自らの肩書も「組合長」だった。
ならば、かつての写真にも残る看板の名称「呑兵衛横丁」は誰の発案なのか。
お恵さんは「井上マスさんだ…