太平洋に面した霧多布(きりたっぷ)岬(北海道浜中町)で、日本ではめずらしい野生のラッコが人気を集めている。海を漂い、岩の上に体を横たえてリラックス。そんな姿とは裏腹に、今年は受難が続く。
地元で海洋生物の調査や保護に取り組むNPO法人「エトピリカ基金」の片岡義広理事長によると、霧多布岬の周辺海域には、10頭ほどのラッコが生息しているという。
海底に潜って好物の貝類やカニを取り、海面に体を浮かべながら食べる。かわいい仕草で見る人をなごませるが、試練も相次いだ。
4月には、国内では初めて、浜中町の海岸に打ち上げられた1頭の死骸が、高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染していたことが判明した。
5月には、母ラッコと赤ちゃんが、シャチの群れに襲われた。親子はその後、姿を消しており、シャチに捕食されたとみられる。
片岡さんは「ずっと観察を続けてきたメスの個体だったので、とてもショックを受けた。でも、その娘たちが4頭いる。亡くなったメスの子や孫たちの成長を、これからも見守り続けたい」と話す。
ラッコはイタチ科の哺乳類で、国際自然保護連合(IUCN)は絶滅危惧種として、レッドリストで「危機(EN)」にランク付けしている。
ラッコには「チシマラッコ」「アラスカラッコ」「カリフォルニアラッコ」の3亜種があり、北海道沿岸にはチシマラッコが生息する。
水産研究・教育機構水産資源研究所の服部薫副部長によると、昨年の時点で、野生のラッコの生息数は、北海道東部の根室市~釧路町を中心に50頭程度とみられるという。