【石破茂首相の発言】
「税率変更する時に、一体どれくらいの期間がかかるかということでございます」「スーパーを見れば分かりますが、そのシステムを変えるだけで1年はかかるということでございます」
(5月21日、立憲民主党の野田佳彦代表との党首討論で)
首相発言が「レジの変更に1年」と拡散 SNSで批判
石破茂首相は21日、立憲民主党の野田佳彦代表と党首討論をした。
物価高対策として、食料品の消費税を1年間ゼロにすると掲げた野田代表に対し、「減収が5兆円になる」と指摘。さらに、「スーパーのシステムの変更」に1年かかると述べた。
討論後、フジテレビが首相発言を「スーパーのレジなどシステム変更に1年かかる」などと伝えた上で、都内の商店街の小売店主らの「1日でできる」「一晩」などといった意見を報じた。SNS上では、首相の「1年発言」に対し、「1年もかかるわけねえだろ」「すぐばれる言い訳」などの批判が拡散した。アカウントの中には、投稿が見られた数や影響力などを示す「インプレッション数」が800万を超えたものもあった。
加藤財務相「短期間で可能とする事業者もいたが……」
首相が言う「スーパーのシステム」について財務省は、店内に複数レジがあるスーパーや小売りチェーンなどで導入されている、各レジの売り上げを集計する「POSシステム」としている。
加藤勝信財務相は27日、参院財政金融委員会で野党議員の質問に対し、複数の大手システム事業者への聞き取りの結果として「短期間で対応可能とする事業者があった一方で、少なくとも1年は要すると見込む事業者も複数あった」と答弁。「1日でできる」という声を紹介した一部報道については、「個人商店の場合は、割と簡易なシステムでありますから、そういった声も確かにある」などと述べた。
大手メーカー「1年以上でもおかしくない」
実際、POSシステムの税率変更にどれほどの期間が必要なのか。合わせて業界シェアの7~8割を占める大手システムメーカー3社(東芝テック、富士通、NECプラットフォームズ)に聞いた。
そのうちの1社の担当者によると、「個人商店などで使う単体の電子レジスターの設定変更なら別だが、POSシステムの税率変更はシステム改修が必要。過去の税率変更の際も、すべての顧客の対応が終わるのに1年はかかった」と話す。
別の社の担当者も、税率変更に伴いPOSシステムに関連する会計管理システムや在庫管理システムのチューニング(調整)が必要になると説明する。「期間限定かどうか、軽減税率をどうするかなどでも所要期間は異なるので一概に言えないが、1年以上かかったとしてもおかしくはない」という。
この2社によると、消費税をゼロにする場合は、「そもそもそういう設定を想定しておらず、新たなシステム開発に近い」ため、単なる税率変更よりも改修期間が長引く可能性があるという。
一方、「そこまで大規模な改修は必要ないので、数カ月から半年」とした社もあった。この社では、外食産業や小売りチェーン、企業の社食のシステムを多く担当しているという。
ただ、「あくまで、メーカー側で要する時間。小売り側の都合やスケジュールもあるので、実際は数カ月から半年より、もう少しかかるのではないか」と話している。
【判定結果=ほぼ正確(一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない)】
スーパーやコンビニ、小売りチェーンなどで使われるレジの販売記録を管理する仕組みは、「POSシステム」と呼ばれる。システムメーカーの大手3社に取材したところ、2社はシステム改修などが必要になるため1年以上かかる見通しを示し、1社は数カ月から半年と回答した。
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