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渋谷陽一さん=2008年

 1972年に洋楽雑誌「ロッキング・オン」を創刊した音楽評論家の渋谷陽一さんが7月14日、74歳で死去した。編集者やラジオDJ、大型ロックフェスティバルのプロデューサーなどとして多方面で活躍するなかで、通底していた思いとは。関係者に聞いた。

「ロックの主役はファン」 投稿中心で始めた「ロッキング・オン」

 ロッキング・オン創刊メンバーの一人、橘川幸夫さん(75)が渋谷さんに出会ったのは70年頃。渋谷さんは19歳の浪人生で、東京・新宿のロック喫茶「ソウルイート」でDJをしていた。

 きっかけは、ロックに関する評論家や音楽ファンの記事を載せるミニコミ誌「Revolution」に、橘川さんが自分の文章を送ったこと。以前から同誌に投稿していた渋谷さんがそれを読み、橘川さんを呼び出して「自分たちで新しい雑誌を作ろう」と誘ったという。

 「ロックの主役は一人一人のファン。雑誌も読者が主役である。それが俺らの共通認識だった」(橘川さん)。同じく投稿者だった岩谷宏さんと、ソウルイートの常連客だった松村雄策さんとともに、読者が音楽について個人的な思いを交えてつづった投稿で構成する雑誌を立ち上げた。

「ロッキング・オン」創刊メンバーの一人である橘川幸夫さん、渋谷さんと同世代でもある音楽評論家・大貫憲章さんに、渋谷さんについて聞きました。また、ポピュラー音楽研究者で大阪公立大学教授の増田聡さんには、渋谷さんが自身の仕事を通じて何を目指していたのか、分析を語ってもらいました。

 橘川さんと渋谷さんは都内の…

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