塚田愛由希さん
山梨県北杜市の市立中学校を2020年春に卒業し、福島高専(福島県いわき市)機械システム工学科に入学した。事故を起こした東京電力福島第一原発の格納容器内で溶け落ちた燃料デブリを取り出すロボットを開発し、廃炉に貢献するのが夢だったからだ。
仲間とチームを組み、廃炉作業を模して全国の高専生らが自作ロボットの性能を競う「廃炉創造ロボコン」(日本原子力研究開発機構など主催)に2年連続で出場した。昨年12月の第8回大会では、スロープや高さ10センチの障害物を乗り越える足回りを担当した。
通路は車輪で、不整地はクローラー(無限軌道)で。ふつうはギアを切り替えるなどして使い分けるが、塚田さんは同じ車軸に車輪とクローラーを重ねて同時に動かした。2センチ浮かせたクローラーの爪が、不整地にさしかかれば自動的に障害物をとらえる。構造や操作を簡素化し、作業時間も短縮する妙案だった。今年度の大会に向けても秘策を練る。
小学生の頃から、お店などのミニチュア作りが趣味だった。キットは用いず「どんな素材で、どう作ればリアルな部品ができるか、アイデアを形にするのが好きでした」
小5の時、原発で事故に対応した人たちのドキュメンタリー番組をテレビで見た。政府の事故対応や被災者の体験談などのノンフィクションを読んだ。関係者を応援する気持ちになった。家族旅行で希望して福島県内の被災地も訪ねた。長期化する被害と少しずつ進む復興を実感。次第に自分も廃炉作業に関わりたいと思うようになった。廃炉ロボコンを見学し、「物作りが役立つ。自分の夢と特技が一致した瞬間だった」という。
廃炉作業は、ロボットの性能不足でデブリの回収作業が難航し本格的に始まっていない。大学へ編入学し、ロボット研究を深め、電子制御や原子力の勉強もするつもりだ。廃炉関連企業への就職は大学院を出てからと考えている。「何十年もかかるし、次々に新しい難題が見つかる未知の分野だと思う。一生を廃炉ロボットに捧げることになりそうです」(西堀岳路)
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つかだ・あゆき 山梨県北杜市生まれ。買い物中でも散歩中でも、構造やしくみ、素材、加工方法などロボットのアイデアが浮かぶと、持ち歩いているスケッチブックで絵図にしておく。昨年の廃炉ロボコンは、操作盤から指示を送れなくなるトラブルで涙をのんだが、特別賞を受賞した。