リクルートワークス研究所の古屋星斗主任研究員=本人提供

■「朝日地球会議2024」セッション「『8がけ社会』を生きる」を前に

 現役世代が2割減る「8がけ社会」となる2040年、高齢化はピークに差し掛かるのに、社会の支え手は激減していきます。これまで通りが通用しない未来に、私たちはどう働くべきでしょうか。労働力が足りない社会と、その働き方を研究するリクルートワークス研究所の古屋星斗主任研究員は、次の世代に向けて「わくわくするフィールドが広がっている」と語ります。

「朝日地球会議2024」

 古屋星斗さんは10月26日、東京都内で開かれる「朝日地球会議2024」に登壇します。作家の九段理江さん、小説家・フィルムメーカーの川村元気さんと「『8がけ社会』」を生きる~希望を持ち続けるためのヒント」について語り合います。

 ――今後「働く」意味は変わるのでしょうか。

 働き手が貴重になる中で、私たちは「ワーク(work)」本来の意味を考えなければなりません。「労働する」と訳されがちですが、「機能する」「作用する」という意味もあります。

 たとえば、隣の家に住むおばあさんとのあいさつはおばあさんにとって、元気づけられたり明るい気持ちになったりとすごく意義があるかもしれない。子どもが遊ぶことも、その光景を見た誰かを救うかもしれない。

 人間は働かなくても生きていれば、社会の誰かに作用している。これこそが「ワーク」の意味だと思います。「8がけ社会」に向かう中で、労働だけではないワークの力を人間が高めていけるか、私はすごく大きなテーマだと思っています。

 令和以降の日本社会は、単なる労働だけでは働き手は足りません。それゆえに労働でない部分が、「労働とは何か」を定義する時代がやってくる。ある種の価値観の転換が求められるのだと思います。

 ――働き手が減る分、活用を進めていかなければならないテクノロジーとは、どう向き合うべきでしょうか。

 技術は万能ではありません。いろいろな人の助けになり、その分仕事や暮らしは楽になりますが、人間を100%代替できません。

 ファミリーレストランで猫ちゃんロボットが配膳をしてくれますが、近くまで持ってきてくれても、テーブルには置いてくれません。手元に届けるまでの「ラストワンマイル」は消費者がやらないといけない。

 それでも、配膳の大部分を切り替えるだけで、めちゃくちゃ便利になる。機械を入れないと持続可能社会はつくれないのだから「AIや機械は使えない」と切り捨てるのではなく、「歩み寄る」「寄り添う」のが大切です。

すかいらーくホールディングスが導入した配膳用のネコ型ロボット=同社提供

「令和の転換点」に訪れるチャンス

 ――「8がけ社会」の主役となるいまの若い人に伝えたいことはありますか。

 暗いように見える未来ですがチャンスだ、ということです。「危機」という日本語は、危険の「危」と機会の「機」が融合してできています。危機には「機会=チャンス」が含まれていると私は考えます。

 人口動態に起因する労働市場…

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