Smiley face

 2021年6月末の夜のことだ。都内に住む40代の女性は、子どもを習い事に送り、月に一度の通帳記入のため、近くのATMに行った。

 機械音が、いつもより長く続いた気がした。

 出てきた通帳を見て、目を疑った。残高が680円になっていた。

 上場企業で管理職を務める夫の給料が入ったばかりで、70万円はあるはずだった。だが、連日、5千円~3万円が1日に何回もおろされていた。

 カードを盗まれたのではないか。そう思い、夫に電話した。

 「何か知ってる?」

 「記帳しちゃったか……。後で説明する」

 その晩、ギャンブルに使い込んだことを打ち明けられた。

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2022年4月25日に42万円あまりの給料が入ったが、その日のうちにオンラインカジノの賭け金に消え、残高は483円になった(画像の一部を加工しています)=2025年5月15日午後0時12分、武田遼撮影

 ギャンブル依存症当事者の家族でつくるNPO法人「全国ギャンブル依存症家族の会」が、7、8日に開かれる第48回全日本おかあさんコーラス東京支部大会(東京都合唱連盟・朝日新聞社主催、キユーピー協賛)に初めて出場する。人知れず悩む人が実はすぐそばにいるかもしれない。ひとりではないと伝えたい。自分もかつて救われたから――。そんな思いが届けと願って歌う。

「異常です」 届いた警告

 夫とは大学で出会った。4年生の時、同じ研究室になった。いつも落ち着いていて、的確な指摘をする姿に憧れた。卒業後に交際し、04年に結婚。2人の子どもに恵まれた。

 夫が、学生時代から競馬好き…

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