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 日本悲願の世界一にリーチがかかった。4年に1度開催の囲碁世界メジャー「第10回応氏杯」の決勝五番勝負で、一力遼棋聖が開幕2連勝。第1局で「歴史に残るであろう絶妙手」(金秀俊(きむすじゅん)九段)を決め、シリーズの流れをたぐり寄せた。

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メジャー決勝。初の大舞台でスタートダッシュを決めた一力遼棋聖=12日、中国・重慶、日本棋院提供

 今月12、14日の開幕ラウンドの会場は中国・重慶。相手は同じく中国の謝科(しゃか)九段。圧倒的なアウェーをものともせず、日本の第一人者の底力を見せた。

 第1局は一力の黒番。応氏杯は黒番8目コミ出し、ジゴ黒勝ちで、日本ルールでいえば7目半コミ出しの「大ゴミ」に相当する。国内棋戦の6目半よりハンディが重く、裏を返せば、黒番の勝利は単なる1勝以上の価値がある。その意識は一力にもあったはずだ。

 大ゴミの負担を軽減すべく、一力は序盤に陣地を稼ぎまくってから、代償に与えた相手の勢力圏に突入した。謝は強襲を仕掛け、一力の大石が生きるか死ぬかのシノギ勝負に。絶妙手はここで放たれた。

 実戦図1 謝の標的は、下辺から中央、左辺に延びる黒の大石。△と退路を断ち、本気の取りかけにいった。対して一力の黒1、3が鮮やかな決め手だった。

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実戦図1 黒・一力 白・謝

 ライブ観戦時、私にはわけがわからなかった。黒3は「アキ三角」といわれる愚形だ。おまけに敵の強固な岩盤にむなしく体当たりする筋悪の手に見える。ところがここから、黒はまるで魔法をかけたように蘇生する。実戦を追おう。

 実戦図2 ▲に本来は白Aと…

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