一力遼名人(28)に芝野虎丸十段(25)が挑戦する第50期囲碁名人戦七番勝負(朝日新聞社主催)は26日、鹿児島市で開幕する。一力が芝野からタイトルを奪取した前期と立場を入れ替えて、再び激突する。
日本囲碁界でもっとも勢いのある両者だが、昨年は明暗が分かれた。一力は名人奪取に加え、保持する3タイトルをすべて防衛して四冠に。対して芝野は一力を上回る五つの番勝負に出場しながらすべて敗れ、無冠に転落した。
しかし芝野は逼塞(ひっそく)することなく、今年も次々にタイトル挑戦権を獲得。十段を奪還して無冠を返上すると、名人戦でもリターンマッチを実現した。
一力は安定して強い。棋聖4連覇、本因坊戦3連覇を遂げ、今月初めの世界メジャー棋戦「LG杯」では決勝進出を決め、昨年に続く世界戦優勝を視界に捉えている。
決戦前の25日、一力は「芝野さんは碁の自由度が増して、対策を立てたところで外れる可能性が高い。未知の展開を楽しめたらいいと思う」。芝野は「年内のタイトル戦は名人戦だけなので、さらに頑張りたいという気持ちが強い」と意気込みを語った。
開幕局は26日午前9時に打ち始め、27日夜までに終局する見込み。立会人は高尾紳路九段(48)。
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開幕前日の25日、検分後に両対局者がインタビューに応じ、思いを語った。
一力遼名人は初めて鹿児島を訪れたという。「素晴らしいホテルとうかがっていましたが、桜島を間近で見られて素晴らしい対局場。こちらで対局できることをうれしく思います」
昨年の名人戦七番勝負と同じ、芝野虎丸挑戦者が相手になる。「今年に入って自由度が増した印象があります。序盤で打ちたいようにされている」
対策を問われると、「立てたところで外れる可能性も高いですから」とした上で、「外れた時にどう対処するか。未知の展開を楽しみにやれたらいいなと思っています」と述べた。
対する、芝野挑戦者は「昨年は悔しい思いをしていたので、すぐに帰ってくることができてうれしく思っています」。
今年は好調を維持してきたが、直近のタイトル戦では厳しい結果になった。碁聖戦五番勝負で井山裕太碁聖の防衛を許し、天元戦挑戦者決定戦で志田達哉八段に敗れて挑戦権を逃した。
「(天元戦で敗れた)金曜日はさすがにすごいショックがありました」と心情を吐露した。「これで秋は名人戦に集中するしかなくなったので、さらに頑張りたいという気持ちが強くなった」
25日付の朝日新聞紙面で、孫喆七段が「今期は4勝3敗で芝野さんのタイトル奪還」と予想した。受け止めを問われると、芝野挑戦者は「昨年の孫さんの予想は一力さん4勝1敗で、結果はちょっとずれて一力さん4勝2敗でした。これで私の4勝3敗がちょっとずれたら危ないですよね」と笑う。「うれしかったのはありますけど、そこはあんまり気にせずに」と冷静に語った。