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「だれでもピアノ」でベートーベンの「第九」を演奏する宇佐美希和さん(ヤマハ提供)
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 ショパンのノクターンを弾きたい――。手足に障がいがある少女の願いと、それに共鳴した研究者の情熱、AI(人工知能)も活用したメーカーの技術力が、「夢のピアノ」に結実した。名づけて「だれでもピアノ」。一本指の演奏が、ベートーベンの「第九」の壮大な調べをホールに響かせた。

 昨年12月。東京・赤坂のサントリーホールで、年末恒例の第九の演奏会が開かれた。オーケストラと合唱をバックに、ピアノで代わる代わるメロディーを演奏したのは、先天性の欠損や筋肉の難病などで手や足に障がいがある3人の女性。弾いていたのは、自動伴奏追従機能付きの「だれでもピアノ」だ。

 一本指でメロディーを弾くと、自動的に伴奏とペダルが追従。AIによる調整で、複雑な楽曲を演奏しているような感覚を味わうことができる。

 開発のきっかけは、2015年、東京芸大客員教授の新井鷗子(おーこ)さん(61)と、脳性まひの少女との出会いだった。

 新井さんは、「題名のない音楽会」などテレビの音楽番組の構成・監修の仕事を経て、10年ごろから非常勤講師として、母校である同大で障がい者とアートの研究を始めた。

 その一環で、特別支援学校を見学してまわっていた15年6月。筑波大学付属桐が丘特別支援学校(東京都板橋区)で、脳性まひで両手足に障がいがある当時16歳の宇佐美希和さんと出会った。

夢はショパンの「ノクターン」を弾くこと

 小学2年からピアノを習って…

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